2012年1/24(火)〜1/25(水)と環境都市生活経済常任委員会の視察に山口県宇部市と広島県呉市に行ってきました。
今回のテーマは「農業」。宇部市では治産池消の取組みについて、呉市では休耕地の有効利用についての話をうかがいました。

まずは一日目の宇部市。
人口は174,064人で面積は287.71平方キロメートル(守山市は78,620人、55.73平方キロメートル)。石炭産業とともに工業都市として発展し、公害問題に直面した際には産官学民一体となった公害対策に取り組み国際的にも高く評価されました。現在は「緑と花と彫刻のまち」として市民一丸となったまちづくりに取り組んでおられます。

宇部新川駅。レトロで懐かしい佇まい。

駅からは工業地帯の煙突が

今回は治産池消の取組みについて、農林振興課、水産振興課の方より説明をいただきました。

■宇部市の農業の現状
中山間地域が多いため小規模農家が多く、高齢化が進み所得は全国平均より少ないという問題を抱えている。食と地域を結びつけ、売れる農産物作りと供給先の確保かることで、地域農業の活性化に結びつけていきたい。

■主な治産池消の取組み
・農産物の提供先の確保
販売店との連携強化、直売所・朝一の活用推進、学校給食への提供
・有機栽培等による高付加価値化
・交流型農業の推進
市民農園、イベント、食育活動

中でも、特に力を入れているのが「学校給食における治産池消の推進」です。
大きな特徴は農林振興課が事務局となって、教育委員会、JA、納入業者、生産者で構成される「学校給食応援団」を立ち上げていること。ここが中心となり、市場仕切り価格を設定することで生産者の手取り価格を確保し、再生産につなげています。納入荷姿も協議し通いコンテナ導入。経費節減策も講じています。
また学校給食の治産池消の大きなハードルは「限られた時間の中での安定供給」ですが、生産現場で供給部会を作り、仲卸を入れることで、その解決にも取り組んでいるそうです。スーパーの総菜部でカットなどの加工をしてからの納品などの工夫もみられます。
他にも、生産者が直接学校で話をすることにより子ども達の好き嫌いがなくなったり、自分で判断してマイ箸・スプーンを持ってくることで親もメニューをチェックし給食に関心を持ったりという取組みも行われています。

心に残ったのが、最初のスタートは一人の熱心な職員さんががんばったことで、その取組みを続けて行くために、立場を越えて「子ども達(将来の消費者)に新鮮で安全な食材を食べてもらいたい」という共通の思い・目的に向かってやっていこうという「応援団」という組織を立ち上げたという話です。
私は常々、「行政も人」だと考えています。一人でも変えていけることはあるんだと、様々な行政現場を見て実感しています。ただ、動きすぎる人材は組織の中では異端視されてしまったり、人が変わったら終わってしまう、ということも多々あります。それをきちんと評価して組織化までつなげていくというのは、素晴らしい実例だと思います。同じく政治も人です。大きな勇気ををいただきました。

宇部市役所前にて

翌日は呉市。
人口は244,068人、面積は353.76平方メートル。
戦前には人口40万人を抱える海軍の拠点として発展し、終戦後は臨海工業得地帯として広島県の産業を牽引。平成15〜17年には近隣8町と合併し、広島南西部の拠点都市としての役割を担っています、

農業の現状としては、下記があげられます。
・島部の柑橘類から内陸部の水稲までバラエティに富み、JAも3つある。
・経営規模が小さく高齢化が進んでいる
・収益性の悪化や有害鳥獣被害により遊休農地が増加している
・蜜柑バブルのような時期があり、島の頂上部まで畑が広がったが、それが耕作放棄され大きな課題となっている。

このような課題をふまえて、現在呉市では、遊休農地の活用ということで、「遊休農地再生・活用モデル事業」「くれ農業元気アップ事業」の二つに取り組んでいます。
「遊休農地再生・活用モデル事業」は、地域の方たちが作る団体が遊休地を利用した事業を展開するのに50万円上限で助成すると言うもので、22年度は、そばやレンゲを植えて地域の集いを行ったり、放棄地の木を伐採したりという事業3件が採択されました。3年間のうち立ち上げの1年のみの助成と言うこと、継続していくには農業委員会との関係が問題となることなど、今後については不透明の部分もありますが、「くれ農業元気アップ事業」と連携して標高の高い地域で酒米を栽培するなど実験的な試みを後押しすることには繋がっていると言うことです。

「くれ農業元気アップ事業」は地産池消やブランド化などの取組みに助成する事業で、22年度は5件が採択され、葱、トマトのブランド化やブルーベリーの生産拡大などの取組みがあるそうです。市内に直売がないこと、販路が広島市に限定されること、応募が少ないなどの問題も率直に聞かせていただきました。

作っていただいた資料も、守山市との数値比較を入れるなど配慮して下さり、わかりやすく説明して下さいました。

今回うかがった2つの都市は、どちらも工業都市としての顔を持ちながら、厳しい状況にある農業分野を生産者や消費者と共に知恵を出しあって盛り上げて行こうと努力されています。
例えば宇部市と守山市では市の規模や卸売り市場の有無などが違うため、「だから守山じゃできない」という声も委員の中からありましたが、「できない理由」を探すだけでは何も変わりません(変える必要性は感じてない方も多いのでしょうが・・)。両市の方に貴重な時間を割いて聞かせていただいたレクチャー、ぜひとも何かにつなげていけたらと考えています。

実は事前に、視察というものが先方の役場で担当の方から説明を受けるだけがほとんどと聞いて、わざわざ公費と時間を割いて行く意味がどこまであるのかは疑問でありました。ここからは、はじめての視察を終えての率直な感想を少し述べたいと思います。

・確かに行かないとわからない、まちの雰囲気や役場の取組みに少しは触れることは出来た

宇部市役所のリサイクルボックス

呉市役所では議員の出欠が目立つ場所に

・守山が本当に小さなコンパクトシティーということが実感

宇部のバスは長い?!

・でもやはり、現場を見ないと意味が無い
・まちのことを総合的に知ってこそ意味があるのでは

受け入れ側の負担の問題もあるのでしょうが、駆け足で2カ所回るよりは、ひとつのまちでの取組みを現場視察も含めてじっくりうかがった方が、実のある視察になるのではと思いました。

またこれまでは報告書も徹底されてなかったと言うことで、事前学習や事後の報告などもセットできちんとやっていかなくてはならないと考えます。小学校の修学旅行だって、それくらいのことはきちんとやっているのだから。
経費的なこと、内容も含めて、市民に胸を張って報告できるような視察を議会改革の委員会でも訴えて行きたいと考えます。